早春の愛嬌者・・・「ビロウドツリアブ」 |
春未だ浅い丘陵地を歩いていると、1センチぐらいの小さな「アブ」が空中に「ホバリング=空中で停止飛翔」しているのを見かけた方も多いのではないだろうか・・・そうです、それが今日の主役なのです。名前を「ビロウドツリアブ」と言って、とてもユーモラスな姿をしていて、まん丸な体に「ビロード」状の毛のついたマントを羽織ったドラえもんの雰囲気のある可愛らしいアブなのです。
中学生の頃、神奈川県の奥に「ギフチョウ」を探しに行ったときです・・・なだらかな細い山道に差し掛かって、一休みしようとしたら、目の前に「ビロウドツリアブ」が飛んできて、長い「口吻」を伸ばしたまま・・・「がんばって歩きなさい!」・・・と言わんばかりに「ブーン、ブーン・・・」と、ホバリングしながら励ましてくれたのです。
ずんぐりむっくりの体形が空中の一点に止まっているのをしばらく見ているとあっという間に消えてしまいました・・・多分数秒のことだったのでしょうが、自分にとっては長い時間だったような気がしています、とても懐かしい想い出です。
2003-4-17 地面に止まった「ビロウドツリアブ」 埼玉県嵐山町にて
*ビロウドツリアブ Bombylius major Linnaeus, 1758
この、ぬいぐるみのように可愛らしい「ビロードツリアブ」ですが、幼虫時代には「ハナバチ」に寄生することでも有名で、「ファーブル昆虫記」にも出てきます。
「ビロウドツリアブ」の若令幼虫は、ハナバチの親が自分の子供のために蓄えた「花団子」を食べてしまい、そのうちにハナバチの幼虫に寄生してそれまでも食べてしまうと言います・・・姿形の愛らしさとは別人格の恐ろしさがあるではありませんか・・・。
未だ枯れ草の多い丘陵地を歩くとこの少年時代の想い出「ビロウドツリアブ」を思い出します。
2007-3-30 「ビロウドツリアブ」 交尾 埼玉県:狭山市