「トラツグミ」は、鳴き声が不気味で損をしている |
上の「諺」にあるように、昔から、気味の悪い鳴き声を出す野鳥として知られており、「怪物ヌエ」として声の主に対して畏敬の念を持たれていたようです。
夜中から早朝にかけて「ヒー」または「ヒョー」とか鳴いて、ちょうど「人が夜中に泣いて」いるような声になっているので、人の命と関係付けられて人々に恐れられてきたのだと言います。この声は、特に、繁殖期の夜間で、曇った日や、雨の日にも良く「口笛」のような鳴き声を出すので、一層恐れられたのでしょう・・・。「ヒー」が高音で「ヒョー」が低音だと言いますが、それぞれの声は細く遠くまで透るような鳴き声だそうです。「怪物ヌエ」については、「平家物語」源三位頼政の「ヌエ退治」が有名で、平安時代、近衛天皇が病床にあった時、毎夜、丑の刻になると御所の上から不気味な鳴き声が聞こえてきたといいます。その声を聞くと、天皇が苦しくなり、病状が悪化したので、源三位頼政がその声めがけて矢を放ち、その怪物を退治した・・・「頭はサル、胴はタヌキ、尾はヘビ、手足はトラ、声はヌエという怪物だった・・・」このことから、得体の知れない人物とか、事象、あいまいな態度などを「ヌエ」というようになったといいます。それらのことから、日本全国に「ヌエ」を冠した「トラツグミ」の地方名は多くあり、「ヌエジナイ」(北海道・群馬県・静岡県・栃木県・愛知県など)、「ヌエ」(富山県・岐阜県・和歌山県・高知県)、「ヌエチャジナイ」(長野県)、「ヌエドリ」(滋賀県)、「ヌエツムギ」(奈良県)、「ヌエシナイ」(鳥取県)があります・・・そのほか、鳴き声からは、「ヒョードリ」(岩手県)、「ヒョーチン」(山梨県)、「ヒョーソウ」(埼玉県)、また、可哀想にも「地獄鳥」(山形県・静岡県)、「ツゴクドリコ」(秋田県)「シビトヨバリ」(福島県)、「ネンブツドリ」「ユウレイドリ」(長野県)など、気味悪いものも多いようです。
それにしても、「トラツグミ」が可哀想だと思いませんか?
下の画像は、埼玉県さいたま市の公園に渡ってきた「トラツグミ」の写真で、私が初めてこの野鳥に出会った記念写真なのですが、なかなか円らな瞳が可愛らしく、落ち葉を嘴でひっくり返しながらミミズを探していました。